英語の教科書にあった名言

中学英語の教科書の裏表紙に、偉人たちの名言が英語と日本語で紹介されていた。その一つにネルソン・マンデラの言葉があった。

If you talk to a man in a language he understands, that goes to his head. If you talk to him in his own language, that goes to his heart.

日本語訳が見つからなかったので英語のみで。ざっくり訳すと「相手が知っている言葉で話せば、頭に届く。相手の慣れ親しんだ母語で話せば、心に届く」。”his own language” が母語になるのかは微妙だけれど、とりあえずこの解釈で進める。英語の教科書が言いたかったのは「だからみんなも英語をがんばって、海外の人と心を通わせるコミュニケーションを取れるようになろうね」ということだと思っている。

こんなことをしては失礼だが、この名言を裏返してみる。つまり、以下のように書き換える。

(1) If you don’t talk to a man in a language he understands, that doesn’t go to his head. (2) If you don’t talk to him in his own language, that doesn’t go to his heart.

おまけに番号まで振ってしまった。失礼極まりない。論理学的には、ある命題が真でも、その裏は真とは限らない。この「名言の裏」についてはどうだろう。(1)は「相手が知っている言葉で話さないと、頭にさえ届かない」。これは合っていそう。いきなり意味不明な言葉で話しかけられたら、理解できるはずがない。

では、(2)はどうだろう。「母語で話さないと、心に届かない」。これは微妙なところだと思うが、とりあえずここ数年の自分の経験に照らし合わせると、あてはまる場面がほとんどだった。たとえば、stackoverflowで雑な質問をして、モデレータに…

…とまで書いて、そんな場面ばかりでもなかったような気がしてきた。あれれ?元も子もない。まあいいや、以下は「もしそうだったら」という体で読んでください。

これは悪いことのようにも見えるが、実際には良いことも同じぐらいある。たとえば、何かをやらかして怒られても心に届かないから、それほどヘコまず、むしろ冷静に反省できたりする。感情と事実を切り分けやすくなる。要は母語以外で会話すれば、メンタルが強くなる。そう考えると結構おもしろい。

英語圏の隆盛の原因や、外国語を勉強する効用には、そういった側面もあるのかもしれない。もしくは、単に自分の英語運用能力が低く、「頭」に届けるのでいっぱいいっぱいになっているだけで、しかもその低い能力を楽しんでしまっているだけかもしれない。

この名言の原文を改めて調べるまで、ずっとマザー・テレサの名言だと勘違いしていた。ついでに、これはそもそもマンデラの名言でもないと主張する記事まで見つけてしまった。じゃあこの「名言の裏」については、自分が言ったことにならないかな。

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