メディア社会論

メディア社会論 辻泉, 南田勝也, 土橋臣吾 有斐閣, 2018 駒場図書館


  • マクルーハン「メディアはメッセージである」
    • 伝える内容と同じくらい、手段が意味をもつ
  • 流動化と個人化
    • 流動化:電子的な(あるいはよりポータブルな)手段によって情報を伝達できるようになり、いつでもどこでも享受可能になった
    • 情報の流通範囲が広がった一方で、個人が受け取る情報には限界があるため、個人に流れる情報は取捨選択される(個人化)。インターネット上のトラブルにおいては、他人に相談することが難しい(個人化→自己責任化)。
    • 再帰化:流動化と個人化によって社会が成立するかどうかも疑う必要が出てきた
      • 勝手に進んでいく社会がなくなりつつあり、あえて共同の営みとしての社会を作るのか作らないのか自分で判断する必要
  • ネットワーク化の歴史
    • 近代:出版
      • アンダーソン
      • 当時庶民のことばは地域ごとにバラバラ
      • 本を作れるようになったはいいが、知識階級向けラテン語市場が飽和してしまい困った
        • →出版語による統一→国語の誕生
      • 想像の共同体:「国民」はメディアによってつくられた
    • マクルーハン
      • 話し言葉の時代:声が届く、対面で話せる部族的なつながり
      • 文字の時代:好きな人の本を自分の意志で読む、個人の誕生(+国民)
      • 電気の時代:話し言葉のような全体的な体験を通して、「地球村」を構成する
        • 以下反論
    • 情報社会論
      • 社会構築主義 <-> 技術決定論
      • グローバリゼーションによる理想の押し付け:ディズニーの世界には工業生産がない
        • 反論あり。自分もよくわからない
      • 格差の拡大
  • モバイル
    • メイロウィッツ:現実とメディアを連続体的に捉える
      • ゲームをするのも現実の一部
      • メディアは現実に介入する
        • 場所をつくりかえる
          • 隔離された刑務所と、テレビのある刑務所
          • テレビ・ラジオ:私的な空間→公的な空間
            • いまラジオ聞いてるけど、なんか若干集中できるのはこのため?
            • 作業通話
          • ウォークマン:公的な空間→私的な空間
    • 場所からの解放:電話
      • 70sまで:道具的利用。「長電話=罪」。短く話してさっと切る
      • 80s以降:自足的利用。電話自体を楽しむ。
        • 公的な空間に置かれていた黒電話を私的な空間に変換したい
        • あえて電話ボックスで話す、コードをトイレまで引っ張る
        • →携帯電話的なニーズはすでに存在していた(!)が、それは物理的な場所からの解放というより、社会的な場所からの解放を求めていた
          • 家族や共同体に見られずにしゃべりたい!
    • 同期性(=電話)からの解放
      • 短文コミュニケーション:ポケベル
        • メッセージの内容以上に、つながり・やりとりそのものを楽しんでいる
          • [[ つながりの社会性 ]]
        • 公衆電話でベルを打つことが好意を証明する [[ シグナリング ]]として機能
        • Twitter
メディア 問題 通話時の不安
固定電話 プライバシー 人称的不安(共有の電話の向こうに誰がいるのか)
携帯電話 公共マナー 空間的不安(相手がどこにいるのか、電話していいのか)
スマホ 依存 行動的不安(通話以外で連絡できるのに、電話していいのか→道具的利用への回帰)
  • 実際に会っていても、相手がスマホで何をしているのかはよくわからない→行動的不安

  • コンテンツとメディア
    • メディア複合体:さまざまなメディア(フォーマット)に一つの作品が拡散する=流動性
    • メディアの多様性が高い時期(リキッド)と低い時期(ソリッド)がある
    • 日本のアイドル
      • リキッド・モダニティにおいてアイドルは流行る
      • アイドルはリキッド:オーディエンスが能動的に意味づけ・考察・解釈をする
        • 未完成であることに肯定的な価値(成熟への過程に魅力を見出す)
        • オーディエンスには、ファンだけではなく共同作業をする作曲家・作詞家・クリエイターも含まれる
          • そのような専門職にとっても、未熟なアイドルはやりがいのある対象になる
      • ソリッドなスター
        • テレビの登場
          • 聴覚のみ→視覚重視、歌だけではなくタレントとしての戦略
          • 映画館にいる、手の届かない存在→日常へ溶け込む、親しみやすい存在
      • アイドル批評
        • 北田:70年代までのテレビの方法論・お約束を元ネタとして、80年代以降はそのパロディを使い「巨大な内輪空間」をつくった(?????)
        • 70年代のアイドルをへて、80sにおニャン子クラブが登場する…一般の女子高校生をアイドルに見立てる(パロディ)
          • 受け手がそのパロディを認めれば彼女らはアイドルとして成立する
        • 80s以降のアイドル冬の時代では、(小室哲哉などとの連名を活用した、)露出により、アイドルからアーティストへと変化
        • また、CDが支配していたソリッド・モダニティな時代では、音楽の自由な楽しみ方がカラオケしかなかった
        • 未熟なアイドルと、歌詞中の人物像の結びつき
          • ミリシタコミュ…
  • 5章:SNS

(表5.1)ボイドによるソーシャル・メディアの4つの特徴 | | 恩恵的側面 | 弊害的側面 | | ———- | ————————————————– | —————————————— | | 持続性 | 離れていても、いつでもメッセージを遅れる。残せる。 | つながりっぱなしによる「疲れ」。 | | 可視性 | 多くの利用者に情報を発信、共有できる。 | 無自覚な発信による「炎上」。 | | 拡散性 | 拡散された有益な情報と出会える。 | 不確かなデマも拡散され、受け取ってしまう。 | | 検索可能性 | 出会うことのなかった人と出会える可能性 | 意図せぬかたちで他人から検索されている。 |

  • 以上の特徴は、インターネット以前においてもある程度見られる
    • メディア決定論的な、「SNSが我々の友人関係を決定的に変えた」という発想はやめよう
  • トラブル
    • SNS疲れ、炎上、いじめ(グループ外し)、なりすまし・のっとり
  • 希薄化論・多元化論
    • 希薄化論:「SNSで若者の人間関係が希薄化した」
    • 多元的自己
      • 状況志向=友人関係を切り替えることができるようになった。それぞれの友人関係の満足度は上昇した(浅野 2013)
  • 6章:音楽のデータ化
    • 手触りの感覚・モノへの愛着
      • すべてがビットになる(物理的媒体から切り離される)
      • 日本において強い
      • 価値基準の変化
        • ファイル交換ソフトでは、すべての情報・芸術がファイルサイズによって比較される
    • 礼拝的価値=アウラの消失
      • 「いま・ここ」にしかない一点モノの価値が、コピー・大量生産によってオーラを剥がされる
      • ベンヤミンは新しい・広く開かれた鑑賞の可能性として肯定的に捉えた
      • アドルノは、マンネリとセンセーショナリズムに囲われた商品化へ芸術を巻き込むものであると、批判的
    • モリスの Arts & Crafts 運動と関連?
  • 7章:ネット広告
    • 広告の個人化:マス広告→ターゲット広告
    • ネット広告は個人化されているが、消費行動は個人で完結しない
    • 消費行動モデル
      • AIDMA, AISAS, SIPS, IPPSなどが提案されている
      • 多元的自己で自己を切り替えながら消費する(?)
    • 個人情報
      • 楽天スーパーDBの分析
        • 基本属性(デモグラフィック):性別・年齢・住居・職業・年収
        • 行動属性(ビヘイビア):購入履歴・サービス利用
        • 心理的属性(サイコグラフィック):行動特性・嗜好・ブランド・趣味・ライフイベント
        • 地理情報(ジオグラフィック):人口統計・エリア特性
      • 使いみちを決めてから集めるのではなく、集めてから使いみちを決めている
        • 「こうしたなか、任意のデータを用いて何かしらの分析がグラフィカルに「見える化」されても、信頼性や妥当性が担保されているとは言いがたい。しかしこうした知見の正しさとは別に、まるでエンターテイメントのように可視化できる点に、ビッグデータの奇妙な明るさはある。」
    • 監視の複合体・リキッドサーベイランス(ライアン)=パノプティコン
      • 「個人データを利用しながら、軍事、行政、雇用、治安、マーケティングの各分野で実践され引き出された技法は、結合し合って権力の複雑な母体を創造」している
      • 「固定化された容器こそないものの、『セキュリティ』の要請に促され、技術化企業の執拗なマーケティングに駆り立てられた監視は、いたるところに溢れて」いる
      • ネットにおけるパノプティコン:「見られていないかもしれない不安」(北田)
        • 監視された記録が残っていないことで疑いをかけられるかもしれない、という不安
        • 規律訓練型社会から環境管理型社会へ(?)
        • アルゴリズムの判断により、自動的にユーザーへの「社会的振り分け」が行われ、暗黙のうちに有利・不利な扱いを受け、ユーザーへの空間的分断がもたらされる
          • バウマン「消費者社会」:「今日、『消費すること』は、嗜好を満たすことというより、自らの社会的な成員資格に投資することであり、それが消費社会の中では『販売可能性』と訳される…消費者の地位を販売可能な商品の地位に引き上げることなのです。…消費者社会の成員は自らも消費財であって、その成員は自らの消費財としての品質によって、消費者社会の真の成員になる」
          • 消費行動を最適化しようとすると、個人情報を差し出す=販売可能性を引き上げることが合理的な選択になる・見えてくる
      • 個人情報の扱い
        • 個人を尊重する
        • 多元的自己に分散する個人情報
          • 個人情報を提供する範囲をあらかじめ決めておく
            • プライベートモードなど
            • サンドボックスと呼べそう
          • マルチアカウント
      • 北田暁大『 [[ 広告都市・東京 ]]』ちくま
      • ライアン『 [[ 監視スタディーズ ]]
  • 8章:ユビキタス
    • ユビキタス:あらゆるところに遍在する + ビッグデータ
      • メリット:的確な、欲しているような、自分にとって有益な情報を得られる
      • デメリット:プライバシーの侵害。一度自分の手を離れたはどうなるかわからない
    • [[ パーソナライゼーション ]]が与える以外の選択肢を忘れてしまう→私という閉域
      • 主体的な行為がなくなって、「おすすめ」の消化作業になる
      • センサーが張り巡らされたユビキタスな都市では、都市そのものがカスタマイズされる
        • 個々人を取り囲うチューブ上の空間が現れる
        • 都市は「自分がこれまで属してきた集団や場所から解放されて、多様な未来の可能性へ開かれ」る=別の「私」を試す契機を与えてくれる場であり続けてきたが、その可能性が閉ざされる
          • 仮想的な場所では、多元的自己によって代替できる?
          • しかし現実的な場所ではアカウントベースの多元的自己が作れないので、いよいよチューブに閉じ込められてしまう?
    • みんな(コモン?)を可視化する
      • [[ priv/テレマティクス ]]
      • 「一般意志2.0」(東 2011)
        • ユビキタスに収集したデータを特殊意志とみなして、それを集計することで一般意志、政策を導く
          • それでうまくいくのかよくわからん
        • 個別意志(特殊意志)の、スカラー和が全体意志であり、ベクトル和が一般意志である(どういうこと?)
    • ユビキタスなデータは共通化されて、個別サービスを越えて社会インフラとなる
      • システムの重要性・問題の大きさに反して、無意識に個人情報を寄付・寄与、そして利用してしまう「環境」となる
        • 貢献者・利用者としての意識がそもそもない
      • 「気をつけましょう!」と啓蒙するのも難しい
  • 9章:リアリティ
    • ポスト・トゥルース
      • メディアを通した情報はすべて、多かれ少なかれ虚構を含む
        • 多様になったのは人々にとっての疑似環境
      • 疑似環境論
        • リップマン
        • ニュースと真実は同一ではない(ニュースは選別され編集された現実)のに、同一だと感じさせてしまう環境
      • 疑似イベント論
        • ブーアステイン
        • 真実よりも、疑似環境に本物らしさを感じてしまう状態が生じ、読者のリアリティ(現実感覚)が変化した
        • そのようなリアリティにフィードバックされるようにメディアが変化し、過度な装飾・ドラマティックな要素を(さらに)含むようになった(ものを「疑似イベント」と呼ぶ)
          • 感動ポルノ?
        • ブーアステイン (1961)「出来事を報道し、複製するこのような新しい技術が発達した結果、新聞記者は出来事の起こる以前に、起こりそうなイメージを描き、報道を準備しておくとう誘惑に陥った。人間はしばしば自分の技術を必需品を勘違いするようになった。読者や観客は、報道の自然さよりも、物語の迫真性や写真の<本当らしさ>を好むようになった。」
          • 予定稿
        • 「新聞が一日にいくつもの版を刷ることを正当化するためには、ニュースがつねに変わっているか、少なくとも変わっているように見えることがまずまず必要になる。…印刷や放送の経費が増大するにつれて、輪転機をいつも動かし、テレビをいつも放送していることが財政的に必要になった。疑似イベントを製造しなければならない必要は、いっそう強くなった。かくしてニュースの取材はニュースの製造へと変化したのである。」
  • 人類学のコモンセンス
  • ボアス・ウォーフ・サピア
  • ワインとワインを交換すると、特定の社会的関係・意味が出現した
  • 法律定立型科学 Naturwissenschaften・解釈記述型科学 Geisteswissenschaften の間にある言語
    • 法則的でもあり、社会にも影響される
    • 出来事は意味を持って現れる
      • 自然には還元できない

Backlinks