No Need for Icons
アイコンはいたるところに存在する。Webサービスに登録すると、たいていニックネームと別にアイコン(プロフィール画像などと呼ばれるが、ここではアイコンで統一する)を設定できるようになっている。Twitter・GitHub・Facebook…「ユーザあるところにアイコンあり」といっても過言ではない。ユーザ同士が交流できるタイプのサービスで、アイコンを使わないものを考えてみても、2chとHacker News、PC版のReddit以外には思いつかない。Slackは一応投稿の表示形式をcompactにすればIRCっぽい表示になり、アイコンの表示を減らすことができる。
特にSNSでは、アイコンの設定は事実上強制される。たとえばTwitterでは初期のアイコンは非常に味気ない(古き良きタマゴはどこへ)。加えてクオリティーフィルターでは「アイコンを設定していないユーザーからの返信を表示しない」というオプションが表示されている。(ほんとに?)また、ユーザーのほとんどがアイコンを設定しているから、なんとなく適当なものでもいいから画像を拾ってきて、アイコンにしようという気持ちにさせられる。
ツイートには必ずアイコンが付いてくるので、ユーザはタイムラインで日々大量の(別に見たくもない)アイコンを大量に見るはめになる。以前フォローしているユーザを全員ミュートしたことを記事にした[リンク!]が、そうしたくなった理由の一つはこれだったのかもしれない。ツイートを読みたいのであって、アイコンは一度か二度見れば十分だし、そもそもユーザを識別するためならニックネームで十分だと思う。
だいたい、誰が言ったかには興味がないのだ。少なくとも、内容に興味を持ってから、その発信者に興味を持つ。あるいは、小さなコミュニティで交流していて、文体を見れば誰の発言かわかってしまうケースも多い。
むしろ、ニックネーム・アイコン・ユーザID(@sei0oなど)という3つのアイデンティティを用意することは、混乱のもとになっている。一例として、Twitter上でつながっている友達のアイコンをコピーしてきて、その人になりすますというイタズラが挙げられる。イタズラで済むこともあれば、有名人のアイコンをコピーしてきてうまくやれば詐欺のきっかけにもなる。もちろんある程度慣れていれば、ユーザIDを見て別のアカウントだと気付くことができる。とはいえ、アイコンの印象は強い。
名前は違うのにアイコンが似ていて混同してしまった、という経験は多くのツイッタラーが持っていると思う。顔写真がよく用いられるFacebookと対照的に、アニメやイラストを切り抜いたアイコンが普及しているTwitterではそのことがより顕著に出る。
Twitterを引き合いに出すと話が長くなりがち。これは僕がTwitterに最も慣れ親しんでいるから。しかしそれだけではなくて、140文字以下の文章にアイコンが一つずつ付いてくる、すなわちTwitterを使うユーザが目にするもののうち、投稿のコンテンツそのものに対するアイコンの比率が他とくらべて高くなるという特性が大きい。文字と画像の情報の密度はずいぶん違うし、画面中にいくつも並べばそれだけで認識する上で十分な負荷が生じる。 この記事ではそれも原因になっていると思う。
数年前から、デフォルトのアイコンをユーザの名前のイニシャルにして、カラフルな色に載せるという手法が取られるようになった。Microsoft TeamsやGmailで用いられている。ビジネスシーンや教育機関ではアイコンを積極的に用いる人はパーソナルなSNSに比べて少ないから、結果として「SY」「DC」「次山」(もちろんこれは「山田次郎」1のイニシャルである)といった何の役にも立たないカラフルなマルが、せっかくのシンプルなUIをけがしてしまうように感じる。
「シンプル」「ミニマル」を謳うサービスでさえ、アイコンを手放すサービスは少ない。
ここまでアイコンの仕組みに対して批判的なことを書いてきたが、実際のところ、あらゆる場面でアイコンやら何やらを排除してみると、どこがどう変わるのか、不満がなくなるのかイマイチわからない。もしかすると大して意味がないのかもしれない。こういうときにプログラムが書けると嬉しい。自作ができるからだ。ただ、できるとはいっても手間暇がかかってしまうから、すぐにはできないと思う。GreaseMonkeyかObjection/Cycriptあたりで既存のアプリを改造する形でできれば
具体的に実験してみたい点を以下に挙げる。
- 「通知」欄の要約効果:Twitterの通知欄には、小さく表示されたアイコンが並んで、誰が「いいね」したかすぐわかるようになっている。
ユーザに限らず、Webサイトのfavicon(タブの左に出る小さなマーク)にも用いられる。
本当はブログ記事のアイキャッチや、動画投稿サイトのサムネイルもいらないと思っている。むしろ先にこちらについてScrapboxにまとめていた。ただし話が拡散してしまって、分割しないと公開できない気がしてきたので、一旦アイコンに範囲を限定して書いた。サムネイルなど、他のメディアについては後日書く。
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長年日本においての “example.com” 的ネーミングとして君臨してきた「山田太郎」さんだが、同名の議員の登場によりその人気に陰りが見え始めている(要出典)。 ↩
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